ダンボールの強度

ダンボールって手ごわいな……! と感じる瞬間って、みなさんにはありますか?
私の場合、ダンボールをハサミで切ろうとした時にいつも、その強さを実感します。

柄を両手で持って、ぐぐっと思い切り握らないと、1〜2cmしか歯が入らない。
なぜこんなにも、ハサミが進んでいかないのだろう?

疑問に思ってよ~く見てみると、切り口がボール紙+波なみの紙+ボール紙……といった、不思議な三層構造になっていました。
これこそが、ダンボールがダンボールたる所以(ゆえん)だったことを、その時の私が知るよしもありませんでした。

──と、まあ、ダンボールの定義に関しての詳細は、別の記事を参照していただくとして、こちらではその構造に軽く触れつつ、ダンボールが誇る「強度」について、じっくり掘り下げていきましょう!

○ダンボールの強度のヒミツ


A4くらいのボール紙(厚紙)を思い浮かべてみてください。
あなたは、そのボール紙をトレー代わりにして、水を入れた紙コップを上に乗せ、運ばなければならないとします。

ボール紙1枚だと、当然ふにゃふにゃで頼りなくて、水入りの紙コップを乗せることなどできませんよね。

仕方なく、ボール紙を10枚ほど重ねて貼り合わせてみます。すると見事、水入りの紙コップを乗せられるほど丈夫になりました。
しかし残念なことに、ボール紙トレーそのものが重たくなってしまいました。

このボール紙をどう加工したら、軽くて丈夫なトレーに変身させられるだろう。考え悩んでいると、頭にひとつのアイディアがひらめきました。
ボール紙の1枚を手に取ったあなたは、端から山→谷→山→谷……と、なるべく細く均一なジグザグになるよう、交互に折っていきます。
そして、それぞれの山折りの頂点に接着剤を塗り、まっさらなボール紙を貼りました。谷折りの頂点も同様にし、こちら側にもボール紙を貼ります。
こうして、ボール紙とボール紙の間に、ジグザグに波打つボール紙をサンドした、1枚の板紙ができあがりました。

すると……頭で思い描いていた通り!
水の入った紙コップが、板紙の上にしっかりと乗ったではありませんか!
しかも軽くて、楽々運べます!
ひらめきに従って少し手を加えただけで、何の変哲もない3枚のボール紙が、軽さと丈夫さを兼ね備えたトレーへと、見事な変身を遂げたのでした。
めでたしめでたし。

────と、少し回りくどい説明になりましたが、途中でみなさんもお気づきのことと思います。
そうです。一連の工作シミュレーションを通じて、ダンボールの仕組みを想像していただいたのです!

キーポイントはもちろん、ボール紙同士の間にサンドしてある紙です。
この紙を、「波なみの紙」「ジグザグに波打つ厚紙」と表現しましたが、じつはちゃんとした名前がついています。
「フルート」です。
このフルートが、天板であるボール紙にかかる重みを分散して、支えてくれているのです。

みなさんは、カラダを「点」で支える敷布団をご存知でしょうか?
なかでも「ムアツ布団」が、一番有名かもしれません。
数多の突起が、上に乗るもの(布団の場合は人体ですが)の重さを分散して、がっちりと支えてくれます。

ダンボールの場合は、フルートの「線」で支える構造になりますが、ムアツ布団と似たような原理ですので、置きかえて考えたら、ちょっとイメージしやすくなるのではないでしょうか。

まだピンとこない方は、実際にダンボールのフチを観察してみてください。
強さの秘密である、頼もしい三層構造をご覧いただけるはずです。

○ダンボールの強度を下げる原因


軽くて強いダンボールですが、残念ながら弱点があります。

それは……「水」です。

他のどの紙とも同じように、ダンボールもまた、水に濡れると破れやすくなってしまいます。

ちょっと小難しい話になってしまいますが、紙は繊維同士が絡みあうだけではなく、パルプ内のセルロース分子が水素結合することにより、固まっています。
そこへ水が加わると、結合が切断されてしまい、せっかく整えたセルロース分子が、バラバラになってしまうのです。

たとえ乾いたとしても、一度濡れてしまったダンボールは、分子単位で素材が変質しているため、残念ながら元には戻りません。
いびつなシワが寄り、破れやすくなってしまいます。

そしてもうひとつ、間違えるとダンボールを弱くしてしまう、重要なポイントがあります。

「目方向」です。

ダンボールが「ボール紙+フルート(波なみの紙)+ボール紙」の三層構造でできていることは、もうご理解いただけていると思います。

ダンボールのシートで、フルートの縦線が入っている方向を、「目方向」といいます。
ダンボールはこの目方向に対して、平行にかかる力にとても強い反面、垂直方向からかかる力には、めっぽう弱いのです。

なぜそうなのかは、お近くにあるレシートやメモ用紙をジグザグに折ってみたら、すぐに分かるでしょう。
簡単に潰れる弱い方向と、ぐっと堪える強い方向がありますよね?

この目方向を間違えると、ダンボールの強度が格段に違ってきてしまいます。
よく見かけるダンボール箱の側面は、全て目方向が天井から床に向けて、縦方向に入っていますよね。
たくさん積み重ねてもダンボール箱が潰れないのは、ダンボールの目方向を正しく使っているからなのです。

これらの弱点を理解できたら、ダンボールの扱いかたも変わりそうですね。

○ダンボール箱の強度をUPさせる裏ワザ


ダンボール箱に重たいものを入れなければならない場合、どうしたら底を抜けさせずに済むのでしょうか。

答えは簡単です。
ガムテープを使うのではなく、布テープを使えばいいのです!
それぞれのテープを見比べてみても、強度の違いは一目瞭然。ガムテープはペラペラで、布テープはどっしりと厚みがあり、糸が織り込まれています。

「テープを変えてみても、まだ頼りないよ~!」と不安に思っていらっしゃる方のために、もうひとつの方法をご紹介しましょう。

裏ワザのキーワードは「十・H・王・米」です!

この文字の意味は、じつに単純明快。
ダンボール箱の底に貼るべき、ガムテープの形そのものなのです!

ダンボール箱の底面を閉じる時、ガムテープを一直線に貼るだけの方も多いと思います。
軽いものや一時的に保管する場合なら、それだけでも全く問題はありません。
しかし、重たいものを入れる時はもちろん、宅配便で送る場合や、長期保管する場合は、もう何本かガムテープを足しましょう。

貼り方は、先ほどのキーワードの通り、「十・H・王・米」です。
本数を多く貼れば貼るだけ強度が増しますので、十の字貼りが一番弱く、次にHの字貼り、王の字貼り、米の字貼りが一番強くなります。
キーワードの並び通りの強度ですので、おぼえておいて、必要に応じて使い分けてみてくださいね。

ちなみに、米の字貼りの両端に1本ずつ足す、最強の「1米1貼り」もオススメです!

どの貼り方でも強度は増しますが、リサイクルに出す際には、ガムテープを取り除いてからのほうがベターですので、強度を上げれば上げるほど、処理が面倒になってしまうかもしれません。
くれぐれも、いたずらに貼り過ぎないよう、ご注意くださいね。

○もともと強いダンボールってあるの?


その答えは……YESです!

ダンボールの強度を変える要因は、いくつかあります。

ひとつは、バージンパルプの含有率です。

ダンボールが、バージンパルプと古紙パルプ(再生紙)でできていることは、他の記事に詳しく書かれていると思います。
素材として使われる古紙パルプは、何度も再生を繰り返すうちに、どんどん繊維が短くなっていき、どうしても弱くなってしまいます。
そのため、ボール紙のバージンパルプ含有率が高ければ高いほど、丈夫なダンボールができあがるというわけです。

もうひとつの要因は、ダンボール板の厚さです。

ネットショッピングなどでもよく使われているダンボール板は、「Aフルート」、または「A段」、「A/F」と呼ばれるものです。
厚さ約5mm、30センチの幅の中にフルートの波なみが32~36個、と規格で定められています。
引越しに使われるダンボールの多くが、このAフルートです。

厚さ3mmで、Aフルートよりも少し薄く、波なみの密度が高い「Bフルート」も、よく使われます。
軽量な荷物の宅配などで、多く用いられています。

AフルートとBフルートを比較しただけでも、強度の違いを想像できるのではないでしょうか。

もっと強いダンボールも存在します。
AフルートとBフルートを貼りあわせたような、5層構造の強いダンボール板は、「Wフルート」、「AB段」、「W/F」と呼ばれています。
こちらは、より頑丈さを求められる、海外への輸出品用によく使われています。

しかし! 気をつけなければなりません!
パルプ含有率が高いから丈夫、Wフルートだから頑丈──とは、一概に言えないのです!

厚さと材質、それぞれの組み合わせ次第で、強度が大幅に変わってしまいます。
古紙含有率95%のWフルートを使用した場合や、パルプ含有率が高い2mm厚のボール紙を使用した場合などでは、期待していた通りの強度を得られないかもしれません。

できれば、使用目的にあわせたダンボールを実際に手に取り、厚さと材質を確認した上で、ベストな選択をしたいものですね。

○番外編・最強のダンボール‼︎


これまでは、一般的なダンボールについてご説明しましたが、それらをふまえて、あまり知られていないけれど、トップクラスの強度を誇るダンボールをご紹介しましょう!

とても強いダンボール────それは「硬質ダンボール」や「超強化ダンボール」と呼ばれている代物です。

特に決まった規格はなく、Aフルート2段重ね5層構造の「AA段」、さらに強いAフルート3段重ね7層構造の「AAA段」のダンボールをそう呼んだりもします。
または、ボード紙やフルートの材質そのものの配合を変えてみたり、種類や厚さの組み合わせを工夫したりして強度を高めた、各社オリジナルの製品もあります。
丈夫なだけではなく、本来のダンボールの弱点である水にも強いという特長を持つ製品もあり、なおかつ耐火性能まで備えているものもあったりと、もはや向かうところ敵なしです。

そんな硬質ダンボール・超強化ダンボールたちが、どんな風に利用されているのか、いくつかご紹介しましょう。

・展示会などで使用する展示台や、バックパネル
・顔出しパネル
・削りカスが出にくい猫の爪とぎ
・小型犬用の室内ハウス
・重い紙束である、帳票の保存箱
・子供用の机や椅子
・棚
・避難所で使える組み立て式ベッド
・組み立て式簡易トイレ
・パレット(荷物をまとめて運びやすくするための、大きなお盆のようなもの。物流に用いる荷役台)

以上のように、木製製品の代替として使われていることが多いようです。
木製製品と比べると、軽くてかさばらないのに、同等程度の強度があり、なおかつコストが安いため、ダンボール製のものが選ばれる機会が増えてきています。
なにより、不要になったら簡単に捨てられる(リサイクルに出せる)のが、ダンボール製品の最大の魅力ですね!

○おわりに……


今回はダンボールの強度について、なるべく専門用語を省いて、さらりとお伝えしました。 ダンボールの世界は奥が深いので、ライナーやボール紙の規格など、もっと詳しく知りたくなった方は、他の記事を参考に、専門的な知識を深めてみてくださいね。 今回ご紹介したガムテープの貼り方で、ダンボール箱の強度を高めてみたり、実際の生活に役立てていただけたら幸いです。 また、家具などご購入される際には、大手ネットショッピングサイトでも、強化ダンボールを使った製品がいくつも販売されていますので、ぜひダンボール製品も検索してみてください。 おしゃれなものがたくさんありますので、選択肢が広がることうけあいですよ!

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